2017年3月7日火曜日

菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール Tour 2017 “凝視と愛撫の旅団 brigada mirada y caricia” 3.6 mon. 2nd SHOW

菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラールを観に行きました。小鉄さんのブログに触発され、観に行きたいと思ったからです。

『戦前と戦後』はその年の私的ベストに選ぶくらい好きな作品だったけれど、そんなに熱心なファンではないですね。いや、著書も何冊か読んでるからわりとファンなのかな。他のプロジェクト含めてライブを観に行くのは初めて。ただトークイベントは一度行ったことある。『戦前と戦後』の購入者特典で当選してチケットもらった。懸賞好きなんだよね。ただ、曲名をちゃんと把握してる楽曲は少ない。「京マチ子の夜」を学生の頃、音楽文化論の授業の終わりの方に、先生が「ミュージックビデオがエッチなので、堂々と流すのはまずいですから、電気を消します」と言って、女がバックから挿入されてる映像にあわせて、暗い教室で聴いた記憶がある。名前しか知らなかった菊地さんの音楽を聴いたのはあのときが初めてだと思う。

今回はブルーノート東京ということで、僕、職場が神保町なので、残業はそこそこに切り上げて、表参道まで半蔵門線で一本。前にマーク・ジュリアナを観にビルボードに行ったときも思ったけど、この手のライブハウスは最高だと思う。なんというか、僕は10代の半ばから20代の前半までインディロックのバンドマンだったのだけど、ライブハウスという空間は全然好きになれなかったですね。ホスピタリティがないし、あまりときめくものがないじゃん。いや、あれはあれでロマンがあるのはわかるけどね。でも、高級なライブハウスにしか行きたくない。僕なんか別にお金持ちじゃないですよ。しょせん高卒だし、たいしたお給金もらってません。でも、そんな人間がちょっと贅沢するだけで気取らせてもらえる場所がいま、どれだけあるかなー? ジャケット着て、革靴履いて、前髪とか上げちゃってさ。音楽、暗い照明、お酒、素敵なサービス。しがない労働者として夢を買いに来てるんだな。とはいえ、ボリュームたっぷりのフライドポテトとホームワインをデカンタでオーダーするだけでも一公演じゅうぶん楽しめるので、厳しいなーと思ってる人も、ちょっとだけ貯金して行きましょう。

「天使の恥部」と申します。

『昭和が愛したニューラテンクォーター』(DU BOOKS)という本があって、これはかつて赤坂に存在したナイトクラブ、夜の社交場、昭和のショー・ビジネスを築いたオーナーが当時の記憶を語っているものだけど、なんというか、音楽が芸能だった時代への憧憬ってあるよね。小鉄さんが先のブログでも触れていたけれど、ペペという楽団はそういう時代の空気を現代に蘇らせようとしているグループだと思う。菊地さんもラジオでオススメしていた本なので興味ある方は是非。



しかし、どいつもこいつも、綺麗な服着て、高いチャージを払って、変な名前のカクテル飲んで、ストレンジ・オーケストラが奏でるトーンクラスタとポリリズムをわざわざ聴きに来ているのだなあと思ったら痛快だった。ツアーのファイナルで二部公演の後半だったからか、予定の時間を大幅にオーバーして熱のあるセッションを堪能させてもらった。バンドにはスウィートなナンバーも多々あることは知っていたが、そっちのレパートリーはさほど披露されず、スリリングな楽曲が多かった気がする。なんにせよ曲名がわからないのですが、たぶん公式にセットリストがアップされているのでは。ブルーノートは箱が小さいので、アンプリファイドされていない生の音が聴こえてくるような規模感(実際はPAシステムがありますよ)なのが、古風なショーを思わせてイイ。もっと爆音で聴きたいなと思うタイミングもあったけれど。

着いた席が上手側だったので、ストリングセクションの様子を伺いやすい位置だった。細かく刻まれるボーイング。鋭いビブラート。迫力ありましたね。第1バイオリンのソロはインプロだったのかな(基本的にクラシック系の弦楽器は楽譜ありきの演奏なので、バイオリンなどを即興演奏できる人はどちらかといえば珍しい)。国内でこんな刺激的な四重奏が観れるのに「カルテット」観てる場合か。関係ありませんね。バンドネオン、最高。この楽器は息を吹き込んでいるようで実際はふいごで空気を送っているわけだが、息づかいをシュミレートする楽器、エロいと思う。高校生のとき『コインロッカー・ベイビーズ』を読んで初めて存在を知ったな。大儀見氏のパーカッションもよく見えました。

誤解を恐れずに言えば、こんなに情欲を焚きつけられるステージなのだから、観客はもっと騒いでもいいと思う。帰ってから肉を焼いて食べました。

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